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2009年10月15日
「譲られ上手」
ヨーロッパでは、レディー・ファーストの国なのでエレベータなどで女性と一緒になった時は乗り降りをまず女性に譲る。そのとき思う事は、こちらの女性は実に譲られ上手だな、ということである。もちろんレディー・ファーストの文化が定着しているから、何の戸惑いも無く先に降りる。しかし必ず「Thank you.」とひとこと言ったり、こちらを一瞥して微笑んで会釈をしたりするのをまず忘れない。順番を先に譲る、あるいはドアを開けて待つ、ということが、変な言い方であるがどんなに「大変な」ことかということをきちんとわかっているから、それに対する返礼を忘れない。だからこちらも笑顔で譲れるし、また譲ろうと思う。「レディー・ファースト」とは単に順番の取り決めではなく、譲られる人が譲る人の心をきちんと受け止め、それに応える文化、その全体を指すという事がよくわかる。ヨーロッパの成熟した社会で長い歴史をかけて作られた文化であろう。
翻って日本に目を向ける。そもそも我先にドアを目指す人が多い中で先を譲られるなんて事自体が無い、という見方もあるが、エレベータで一緒になった人(男女を問わず)に順番を譲ってみても、「至極当然」という顔で何も言わずにまっすぐ降りる人もいれば、戸惑ってやはり無言で降りる人も居る。戸惑った人を前にすると、譲られる事に慣れていないんだなぁ、レディー・ファーストの文化が日本では定着していないしなぁ、なんてことを思ってため息をついて終わりだが、「至極当然」組と一緒になると、まずかわいそうな人たちだなあ、と思い、一方でもう二度と譲るもんかという気持ちになる。(一方で、お互い顔見知りの日本人、特に仕事上の関係があり何かしらの上下関係が存在する人々が鉢合わせになると、いつまでもお互いに「お先にどうぞ」「いやどうぞどうぞ」が続くのは見方によっては非常に滑稽である。そしてこういう場面でいつも先を譲られる「上の人」が、街に出て一人の市民になってもいつも道を譲られて当然と思っているんだろうな、と思う。かわいそうな人々である。)
非常に些細な事ではあるが、何かをしてもらう時に、その背後にある、それをしてくれた人の心をきちんと理解し、受け止め、それに対して返礼をする。それがあるかないかが、レディー・ファーストのみならず、世の中のありとあらゆる人のインタラクション、そしてサービスを心地良いものとして育て定着させるために必要なことなのではないかと、レディー・ファーストの国で思う。
