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2007年04月10日

レコードを聴く"エクスペリエンス"

今日の一曲」の方で、昔ばなしのついでに「レコードに針を落とす」という表現を使ったら、「『針を落とす』というのはリッチなエクスペリエンスだ」という指摘をしてくれた人がいたので、ちょっと考えてみました。(今回はある一定年齢以下の人にはわからない話かも知れない。ごめんなさい。)

レコードに針を落とすって言うのは... なんだろう。まずレコード(LP)はCDと違って割れるし、聴くたびに確実に劣化して行く、fragile なものだっていう前提が「聴く」行為を特別にしているんじゃないかな、って思います。

扱いが手荒だと傷ついたり割れたりするから、レコードをプレーヤーにそっと乗せる。今日1回聴くと、自分の大切な財産の価値がまた減ってしまうんだけど、それよりも自分が今聴きたいという気持ちの方がとても強いんだという事を改めて確認して、事に及ぶ。無造作に針を落としてしまうと傷になったり、曲の途中に落ちてしまったり、下手するとレコード盤の外に落ちて「大変な事態」になったりするから、慎重に事を行う。張りつめる緊張。無事針が乗ってノイズが聞こえてくると、安堵。でも心臓がちょっと高まったのが収まるほどの間もなく、音楽が鳴り始める...

「音楽を聴く」ことにこれだけの儀式と自分の気持ちの確認と精神的・生理的高揚があった時代なんだなあ、と改めて思いました。確かに「リッチ」な時間だ。

投稿者 umemuro : 2007年04月10日 00:09

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コメント

レコードが主流だった頃は、それが「リッチ」なエクスペリエンスを提供するものだと考えて作っていた人はいないのでしょうね。
卒論のときに「ホットケーキの素を後は焼くだけでいいように改良して販売したら全然売れなかった。顧客は『料理しているような感覚がないと味気ない』と批評した」みたいな話を(たしか)消費者心理の本で読みましたけれども、同じ市場でより便利なものが出回らないと、そういうエクスペリエンス(この例の場合は「リッチ」とは言えないかもしれませんが、ともかく)もまた潜在的に望まれていることは見えにくいのかなと思いました。

そういえば東工大の文化人類学の上田紀行先生が「CDやDVDで音楽やら映画やらを自分の物として所有できる時代だけれども、それは本当は所有ではないのではないか。所有することで一期一会の素晴らしい出逢いを失い続けているのではないか」みたいなお話をされたことがあったのですが(うろ覚えなので細部どころか大筋も違うかもしれませんが)「完全なる所有」とか「何度も聴ける」「何度も観れる」という概念は「リッチ」なエクスペリエンスと相反するところにあるのかもしれません。
(この場合、レコードというモノは永遠に所有できますが「その中の音楽を聴く」ことを永遠にできるわけではないので)

何だか話があっちこっちに飛んだ挙句まとまりがなくなってしまいましたが、触発されて思いついたことをつらつら書いてみました。
見苦しくて&読みにくくてすみませんー

投稿者 yashy : 2007年04月10日 01:35

「永遠」から連想して森絵都さんの小説「永遠の出口」を思い出しました。
どこがどう繋がるのかはうまく説明できないのですが、第1章で主人公の少女が「永遠に○○できないね」と言われるたびに苦悩した幼い頃を回想している辺りに、この議論?に似たものを感じました。

「永遠に所有できない」ものだからこその出逢いの素晴らしさ。
「自分には永遠に見ることがかなわない」ものへの憧憬。

何となく通じるものがあるように思えたのですが…

どちらにしろ名作だと思うので、未読でしたらぜひお読みくださいw

投稿者 yashy : 2007年04月10日 01:51

さすが上田先生。
「一期一会」。
僕も中学生か高校生の時に習って、意味は知っていても、若い頃って実感無いんだよね。
今来てる場所も、今目の前にいる人も、今体験している事も、これからの人生でもう一回くらい来る/会う/やる機会はあるはず。20歳前後の頃はそう思うのが自然だったように思います。
人生折り返しを過ぎたあたりになって、ようやくこの言葉が実感を伴って理解できるようになりました。もしかしたらもうここに来る事はないかも知れない。もしかしたらもうこの人に会う事は死ぬまで無いかも知れない。
でも、よくよく考えてみると、20歳前後で会った人で、それから全く会った事がなくてこれからも疎遠になっちゃって果たして会うかどうか、あるいは全然行ったことない土地、見直した事無い映画、読み返した事の無い本、いっぱいあるんだよね。実際のところ。それに都市も自然も人も変化するから、例えば20歳の時に行ったパリは、もう二度と同じ姿を見る事はできない。厳密に言えば。
だから、ああ、やっぱり「一期一会」なんだ。いっそう実感を込めて思えるようになって来たのでした。

コメントありがとう。本は早速注文しました。

投稿者 umemuro : 2007年04月11日 00:27

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